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No.1 地下道と青墓の杜と(1/2)

last update 최신 업데이트: 2025-07-09 18:00:06

 辻沢には地下道が張り巡らされている。よからぬ噂が絶えず、中に降りる事さえ敬遠されるこの陰気な場所は、辻沢が隠れ遊里だった江戸のころしばしば起こった遊里狩りに、粋客たちや位の高い遊女を逃がすために造られたと言われている。遊里がすたれた昭和には、どこへ通じているのか、どのくらいの規模なのか知る人もいなくなってしまった。そして、明かりも届かずところどころ内壁が崩れて汚水や雨水に浸食され、ネズミの死骸やコウモリの糞の悪臭漂うこの場所は、呪われた輩の棲みつく魔窟となってしまった。

 今夜は満月だ。満月と新月には大潮が発生し、地下道の呪われた輩が蠢き出す。潮の満ち引きに合わせてあの世がこの世に近づくからと言われているが、同じく呪われた身である鬼子もまた、閾を超えて発現する。「あたし」がボクになる「潮時」が来たのだ。潮時の深夜になるとボクは必ず地下道にいて呪われた輩を夜通し狩り続ける。それがエニシに縛られたボクの衝動だからだった。

 地下道に降りる時分はまだ意識はあるが、しばらく彷徨ううちに理性が真紅の被膜に覆われ、眼前の障害を排除することに支配される。

 くるぶしまで汚水が浸る緩やかなカーブを歩いていると、人影がこちらに近づいて来るのが見えた。暗闇に浮かぶ金色の瞳、唇を突き破って鈍色に光る牙、胸元を赤黒く染めているのは首の傷から出た血の前掛けだ。ヴァンパイアに捕食された者の成れの果て。未来永劫濁世に留まり、死滅さえ許されぬ亡者。屍人だ。それが数メートル先で立ち止まり、「あたし」の名前を呼んだ。

「ウチら友達だよね」

 無論ボクに覚えはない。ボクが暗闇にいる間の「あたし」の知り合いなのだ。屍人は旧知に出会うと己の存在理由を問うてくる。それに応じなければ襲われることはないが、応じればその凶暴な牙を剥く。それをボクは敢えて言葉を返す。

「うん。友だちだ」

刹那、屍人は距離を詰めボクの喉元に銀牙を突き立てて来た。それをかがんで避け、勢い余って突き出た屍人の顎に頭突きを食らわす。暗闇に散る火花と銀牙がかみ合う金属音。屍人は宙を飛び背中から汚水に叩きつけられる。立ち上がりかける屍人に飛びつき馬乗りになって、頭を両手で掴み首を捻じると骨がひしゃげる音が汚水を揺らす。そのまま首を捻じ切り持ち上げると、黒
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  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   1-11.補陀落渡海(3/3)

    「おー懐かしい、四宮浩太郎の「辻沢ノート」。これは辻沢調査の基本文献だよ。あたしも学生のころ熟読したもんだ。それじゃあ、この赤字は」 さらに黒縁めがねを引き上げて、「たしかに、鞠野フスキの字だよ」                                                      「マリノフスキ?」「文化人類学者で偉大なエスノグラファーのブロニスワフ・マリノフスキーからとった鞠野先生のあだ名でね。みんな鞠野フスキって呼んでたんだよね」 その口ぶりは先生というより同級生の男子のことを話しているようだった。鞠野教頭先生は生徒に慕われる教師だったらしい。「じゃあ、これって何のことか分かる?」 ミユキ母さんはホロのページを行ったり来たりしながら、「そうだね、これなんかあのことなんじゃないかと思うよ」 と言ったのは、「鬼子は船であの世に渡る」 という書き込みだった。「あのこととは?」「補陀落渡海(ふだらくとかい)のこと」 補陀落渡海というのは中世ころの風習で、死を決した行者が少しばかりの水と食料を用意して小舟で海に乗り出し海の向こうにある浄土、補陀落に向かうことをいう。小舟は縄でつなげて沖まで曳航され、縄を切られた後は櫂も帆も付いていないため波に任せるまま漂流する。その時、行者は小舟に設えられた小館に入りその出入り口は木の板で蓋をして釘で打ち付けて出れなくされている。命が惜しくなって泳いで戻って来れないようにだ。「それってまるで」「即身成仏だよね。それでも行者の多くは喜んで小舟に乗り込んだそうだよ」 行き着くか分からない目的地に向かい、波に翻弄され幾日も幾日も空腹に耐えて、暗闇の中で行者さんはどんなことを考えていただろうか。その孤絶を思うと胸が締め付けられる思いがした。「ここで言ってる鬼子って行者さんのことなのかな」 修験道姿の鬼をイメージして聞くと、「この書き込みだけじゃ、わからないけど」 とミユキ母さんが言い終わらないうちに邪魔が入った。〈♪ゴリゴリーン お客様です〉「来た

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   1-11.補陀落渡海(2/3)

    「できました。異端のパンケーキ」 ミユキ母さんは、すぐさまパンケーキを素手で掴んでベーコンを包んでかぶりついた。「おいしい?」「胡椒がぜっふぃん(絶品)」冬凪とおんなじ反応だった。異端の胡椒は、あたしがレシピを読み間違えたのが初めだ。ネットに出ていたレシピに、牛乳とか卵とか薄力粉とかと並んで、B・Pとあったからてっきりブラック・ペッパーのことかと思って胡椒をたんまり入れて焼いた。その時最初に食べた冬凪が、「異端過ぎる。なんで胡椒?」 って聞いたから参考にしたレシピを見せると笑い出して、「B・Pはブラック・ペッパーでなく、ベーキング・パウダー(ふくらし粉)な」 その後、ベーキングパウダーに変えて作ってみた。多少膨らんだのはよかったけれど、なんか後味がエグエグしてたのと、関係あるか知らないけれど食べてしばらくしたらオナラがプップカ出たので、以後、パンケーキの時はブラックペッパーということにしている。 ミユキ母さんが紙本に顔を埋めながら手探りで三枚目を取ろうとしていたので、ベーコンを挟んで渡してあげる。「ありがと」「何の本読んでるの?」「『新しい太陽の書』っていうSFファンタジー小説」「面白い?」「面白いけど、セヴェリアンは中に入りすぎかな」「セヴェリアン?」「主人公。拷問者の」「拷問者が中に?」「そう、中に」ロックインのことかなと思ったけれど、話が長くなりそうなのでそれ以上聞かなかった。 その時、ふと思いついた。そうだ。あのことをミユキ母さんに聞いてみたらどうだろう。書き込みがミユキ母さんの指導教授のものだったとしたら冬凪よりいい情報が得られるかも知れない。「ミユキ母さんに見て欲しいものがあるんだけど」 紙本から顔を上げて質実剛健な眼鏡の縁に指を当てながら、こちらをまじまじと見た後、「なにかな?」 そこでリング端末で例の赤字の書き込みをホロ表示させた。ミユキ母さんは、「この本は?」 あたしは経緯から詳しく説明した。すると、「そうなんだ

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   1-11.補陀落渡海(1/3)

     またクチナシの人の夢を見た。それがいつもと少し違った上に妙にリアルだった。あたしが夜祭りを覗いていてクチナシの香りに誘われ志野婦神社の杜に踏み込みクチナシの人に出会うところまでは一緒だった。でもその後が違った。あたしのことを突き飛ばした人はカレー★パンマンのお面を被っていて、あたしはあたしでアン★パンマンのお面を付けていた。夜祭りだから? それと今、右手の薬指の付け根がズキズキとうずいている。今までこんなことはなかったのに。枕元の手乗りカレー★パンマンのぬいぐるみを手に取って、「あんたのせいだよ」 胸に抱くとなんだか指のうずきが収まるような気がした。このぬいぐるみはゲーセンにあるクレーンゲームの景品のようだが、知り合いが誕生日になると必ずくれるものだ。これと同じものが壁の棚に十六個並んでいる。 顔を洗い部屋着に着替えて階段を降りて行くとコーヒーのいい香りがしていた。朝日が差し込むキッチンテーブルでミユキ母さんが最近買ったぶっとい黒縁の眼鏡を掛け、カプチーノ片手に紙本の文庫を読んでいた。お休みの日だからのんびりしているのだ。「冬凪は?」 部屋にいなかった。「出かけたよ」「こんな早くに?」 いつもならまだ寝ている時間だ。「八月まで山椒摘みを手伝うんだって」 終業式がすぐで学校に行かなくてもよいにしても十日間もか。「四ツ辻?」「そう。紫子さんのところに住み込みで」 辻沢の西に位置する山並みを西山地区というが、そこに山椒農家が集まる古い集落があって、冬凪が懇意にしている紫子さんという農家さんがいる。フィールドワークをしていて知り合ったとか。月末まで留守か。この間鞠野文庫で見付けた本のこと、特に鬼子の書き込みのことを聞きそびれた。VRチャットで話せば済むけど、なんとなく直接聞きたかった。 それより、お腹がすいた。紙本に顔を埋めているミユキ母さんに、「朝ご飯食べてないよね?」 紙本から目をあげてあたしを見ると、「まだ。何食べよっか?」「なら、パンケーキ作るよ」「お、いいね。当然、異端の?」「異端の」 材料棚から

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   1-10.アワノナルトのイザエモン(3/3)

     鈴風とあたしはバスの揺れを感じ窓外を流れる街並みを眺めながら六道園プロジェクトのことを話していた。すると、 「最近、女子の間で血ぃ出すやつ流行ってんじゃん」  後ろのほうから声が聞こえて来た。振り向いて見ると、さっきまで空いていた席に三人の女子高生が座っていた。三人ともガルル育成高校で名高い成実(なるみ)工業女子の制服をレトロな感じで着ている。何故だかあたしは彼女たちから目が離せなくなった。 「瀉血な。リスカっぽいやつ」  リスカってもはや死語構文。 「そう、それ。あれって実はヤオマンの女怪がやらせてるらしいよ」 「は? なわけねーしょ。ヤオマンの会長は辻沢のヒーローだし」  「だしょ。それがさ、本当はヴァンパイアで若い子の血を欲しがってるって」 「はあ? それはツリだわ」  ツリ? 嘘ってことかな。 「いや、マジでマジで」 「ツリツリ。そんなでっけー釣り針、ウチ引っかかんねーから」 「ツリじゃねーて」 「てか、ミノリ。ほっぺのホクロからぶっとい毛ぇ生えてっから」 「マジで? ヤバ。そんなギャルありえんって。カエラ、鏡貸して」  そうギャルだよ。この子たちのファッションもギャルファッションだ。世代ならガルルって言う……。 「はいよー、鏡。それ、死んだ親友のためらしいよ」 「ありがと、あ? カエラなんて言った? アイリどこよ、どこに生えてんの?」 「うっそー。だまされてんのー」 「こんの。テメ、コロス」 「テメーが、クソねたブッ込むからだろ!」  あーあ、猫パンチ合戦始めちゃった。 「今の見た?」  鈴風に振り返ると、見ていなかったようでさっき話していた時のままの笑顔で外を見ていた。あたしもその視線を追って窓の外を見るとやけに無表情な景色が流れていた。バスの中の音も遠くのほうから聞こえてくるようで、まるであたしだけが別の空間にずれてしまったような感じがした。 〈♪ゴリゴリーン 間もなく辻沢駅、終点です。お降りの際は、来し方を振り返りませんようお願いします。辻バスをご利用いただき、ありがとうございました〉  バスが駅のロータリーを旋回しはじめた。その時になってようやく他のお客さんのざわざわ声が近くに聞こえて来た。 「夏波センパイ、降りますよ」  鈴風が出口に向か

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   1-10.アワノナルトのイザエモン(2/3)

    「夏波センパイ、コアなゲーマー知ってるんですね。実は夜野まひるのファンだったり?」「いやいや、偶然なにかで目にしただけだよ。名前だけね」 実際、アワノナルトに関して詳しいわけではなかった。何となくビジュアルは知ってても、どっちがイザエモンでどっちがユウギリかさえ分からなかった。鈴風の説明によると、アワノナルトのイザエモンというのは、容姿からファッション、プレイスタイルに至るまで、夜野まひるにそっくりで、だからレプリカと言われているのだそう。「その夜野さんって何年も前に飛行機事故で」 あたしがそう言うと、鈴風にはめずらしく興奮した様子で、「そうなんですよ、今も行方不明なんです。だから彼女はレプリカなんかじゃなくて…」 と言いかけたのだけど、急に両手で口を押さえて下を向いてしまった。「どうしたの?」「いえ、なんでもありません」 顔を向けた頬は真っ赤だった。あたしはそんな鈴風を観たことがなかったので何も言えなくなってしまった。そのまま無言の時間が通り過ぎて行った。窓の外は日が傾き裏山の森が赤く染まりはじめていた。「帰ろうか?」「はい」 VRブースをスリープさせ戸締まりを確認して一緒に部室を出た。〈佐倉鈴風様、さようなら。夏波、じゃあね ♪ゴリゴリーン〉 とっくにあきらめてるけど、この差別はいったい? 数十分後、鈴風とあたしは、紫の夜が夕日をおしやり行き来する車がライトを点灯し始めた通りのバス停で、駅に向かう辻女生の列の先頭にいた。前のバスが満員になって一本やり過ごしたためだった。「辻沢駅行きのバス、来ましたよ」「それほど待たなくてよかったね」〈♪ゴリゴリーン 辻バスにようこそ〉 一番後ろの席が空いていたからそちらに向おうとすると、鈴風が、「そこ座んないほうがいいです」 と言ってあたしの腕をとって止めた。そういえば立っている人もいるというのにそこだけ誰も座っていず、変な感じだった。クーラーの風が当たってあそこだけメッチャ寒いか、座席にお印でも憑いてるんだろう(笑)。 あきらめてつり革につかまるこ

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   1-10.アワノナルトのイザエモン(1/3)

     もう下校の時間だったけど部室に寄ることにした。鈴風が残っていたら一緒に帰ろうと思ったからだ。前園記念部活棟の廊下を折れると、突き当りの園芸部の部室に明かりがついていた。鈴風いるみたい。〈♪ゴリゴリーン。夏波、お帰り〉 なんでかあたしの時だけ呼び捨てのタメ口。きっと生徒管理AIはあたしをナメてる。 中に入るとVRブースから紺のセーラー服の長袖が見えた。鈴風まだロックインしてる。外部モニターを見ると、六道園プロジェクトではなくVRゲームの画面が映し出されていた。鈴風がプレイしているのは流行りのVR戦闘ゲームだった。動作投影型アバター100人で生残りを賭けて戦うバトロワゲー(バトルロワイアルゲーム)だ。ただ目を疑ったのは、鈴風がとてつもなくうまかったこと。プレイグラウンドに現れる敵を次々に、しかも簡単そうに倒してゆく。無駄のないムーブ、目の覚めるようなエイム。ひょっとして天才なんじゃって思うくらいの猛者ぶりだった。そして最後の一人をあっけなく倒してマッチは終了。ファンファーレが派手に鳴り響き賞賛の言葉が猛烈な勢いでチャット画面を流れていく中、銀髪ロン毛に金色の瞳、真っ赤な唇をした、漆黒のブレザースカート姿の少女が小気味よいダンスを踊り出す。それがこのバトルフィールドを制圧したプレイヤー、鈴風のアバターだった。そしてそのままフェイドアウトしてマッチは終了した。VRブースから排気音がして鈴風がロックアウトする。VRゴーグルを外しブースから身を乗り出してあたしに気づくと、慌てた様子で、「あ、夏波センパイ。すみません。ちょっと別のこと、あたし」 と謝って来た。園芸部ではプロジェクト以外のロックインを禁止しているわけでもないし、息抜きにゲームをしてても別に誰も咎めはしない。だから、「別にいいよ。ゲームしてたって」 そういえば鈴風は、最初にゲーム部に入るか園芸部に入るか迷っていたって十六夜が言ってたな。おそらく十六夜の強引な勧誘に負けて園芸部に決めたんだろうけども。「いいえ、ゲームじゃないんです。アーカイブ観てたんです」「じゃあ、あの猛者は鈴風じゃ?」「あたしじゃないですよ。伝説のゲームアイドル、夜野まひるの―――」 その名前はこの間耳にしたばか

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